アルコールチェックの義務化を知っていますか?
2011年にタクシーや運送業など緑ナンバーの事業者を対象にアルコールチェックの義務化が始まり、2019年には鉄道業界や航空業界でも義務化されました。
2023年12月1日から、いわゆる白ナンバー車もその対象となります。
「乗車定員11人以上の自動車1台以上、もしくは自動車5台以上を保有している」事業所において、安全運転管理者によるアルコールチェッカーでの検査が義務化されると、警察庁から正式に発表されました。
道路交通法改正により、今後使用する機会が増えると考えられるアルコールチェッカーですが、どういうものかが分からないという方、正しい使用方法や保管方法を意識せずに使用している方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、アルコールチェッカーの正しい使い方や保管時の注意点などについて解説します。
アルコールチェッカーとは?
アルコールチェッカーとは、体内のアルコール濃度を数値化してくれる機器です。
一般的に体内のアルコールの濃度を測定する方法として「血液採取」と「呼気採取」が挙げられますが、アルコールチェッカーはその中でも、息を吹きかけてアルコール値を測定する「呼気採取」が用いられています。
また、アルコールチェッカーには主に「半導体式」と「電気化学式(燃料電池式)」の2種類の方式があり、特徴として以下のようなものが挙げられます。
半導体式
- 低価格
- 高感度
- コンパクトで持ち運びやすい
- アルコール以外の成分に反応しやすい
- 「電気化学式(燃料電池式)」と比較するとセンサー寿命が短め
電気化学式(燃料電池式)
- 価格が高い
- 精度が良い
- 「半導体式」に比べて大きい
- アルコール以外の成分に反応しにくい
- センサー寿命が長い
他にも、アルコールチェッカーにはデータの保存方法に違いがあり、端末にのみ保存するメモリ機能付きのもの、端末からPCにデータを送信してアプリと連携するもの、インターネットを通じて結果を管理するクラウド連動するものなどがあります。
企業や事業所の業務形態や検査人数など、用途や予算に合わせて選びましょう。
アルコールチェッカーの正しい使い方
アルコールチェッカーでの検査は、正しい測定方法で行わないと正確な測定結果が得られません。
使用する際は製品の取扱説明書に記載されている測定方法や測定時の注意事項をよく確認しましょう。
アルコールチェッカーを使うタイミング
アルコール検査を行うタイミングは、運転業務の前と後の2回行うことが義務付けられています。
運転前に体内のアルコールが残っていないこと、運転中に飲酒を行っていないことを証明するために行います。
使う際の注意点
アルコールチェッカーを使用する際は、以下の点に注意しましょう。
- 飲食や喫煙、オーラルケア用品の使用直後、薬の服用直後に行わない
アルコール飲料を摂取していなくても、パンや漬物をはじめとする発酵食品や、清涼飲料水や栄養ドリンクなどには微量なアルコール成分が含まれるものがあり、それらを検知してしまう場合があります。
また、喫煙やオーラルケア用品、においの強いもの、お薬の服用直後にも、センサーが誤検知する可能性があります。そのため、飲食や喫煙、オーラルケア用品の使用、薬の服用の後は、目安として20分以上時間が経過してからうがいをして測定を行って下さい。
- アルコール消毒や制汗スプレー・シート類を使用した直後に行わない
汗拭きシートやスプレー用品にアルコール成分やアルコールと誤認されやすい成分が含まれており、周囲に漂うことで測定に影響を与えてしまうことがあり注意が必要です。
それらを使用した場合は、十分な換気を行ってから測定を行って下さい。
- 測定前は水でうがいをする
うがいによって口内に残っているアルコール成分や誤検知する成分を減らしてから測定しましょう。
- 息を吹き掛ける際は、一定の強さで持続的に息を吹込む
吹きかける息の強さが弱い、途中で止まってしまうと測定エラーと表示されたり、正しい結果が出てこない場合があります。
- 測定時は、吹き込み口に唾液や水分が入らないようにする
唾液に含まれる不純物がセンサーに付着し、精度に影響を与える場合があります。
以上の注意点とは別に、呼気の個人差が測定に影響する可能性もあります。
たとえば、体調や体質、持病により、体内で反応物質(ケトン体)が生成されてセンサーが反応してしまうことがあります。ほかには急激なダイエットをした場合も同じように反応物質が生成されるため、センサーが誤検知してしまう場合があります。
保管する際の注意点
アルコールチェッカーを保管する際に、以下のような場所を避けることが推奨されます。
- 高温多湿な場所、温度変化が大きい場所
直射日光があたる、もしくは暖房付近や炎天下の車内などの高温環境下には放置しないようにしましょう。
- 埃や粉塵が多い場所
埃や粉塵などの異物がセンサーに悪影響を与え、誤動作や不具合の原因になります。
- 強い匂いがする場所や物の近く
酒類、たばこ類、芳香剤やスプレー用品等には、アルコール(エタノール)成分や誤検知する成分が含まれていることがあります。近くに保管するとセンサーに悪影響を与えてしまう場合があります。
データ記録
アルコールチェッカーでの検査が義務化対象となる事業所は、測定するだけでなく安全運転管理者の点呼や測定結果などの記録を1年間保存することが定められています。
記録媒体は指定されていないため、紙や電子媒体での保管どちらでも問題ありません。
記録する内容
アルコール検査として記録すべき内容は以下を参考にして下さい。
- 検査日時
- 運転者氏名
- 実施確認者氏名
- 運転車両のナンバーなど
- 指示事項や日常点検など
- 確認方法
①「運転者の状態を目視で確認」
※対面確認ができない場合は代替の具体的な内容。(電話報告や写真・webカメラ等による目視等)
②「アルコールチェッカーを用いて確認」
- 上記それぞれで行った酒気帯びの有無の結果
なお、注意点としてアルコール検査の結果は、運転の可否を判断するものではありません。
あくまでアルコールチェッカーは飲酒の有無を判断するための判断材料である、という認識が必要です。
アルコールチェッカーの点検方法
アルコールチェッカーは「常時有効に保持」することが義務付けられています。
アルコールチェッカーは消耗品のため、定期的に新しい物と交換をするか、製品によっては検査や修理に出す必要があります。
ご使用前に機器の破損や電池残量の確認を行うとともに、センサー寿命が有効期限や回数を超えていないか確認しましょう。
また、有効期限や回数は定期的に確認し、必要な時に速やかに交換できるよう、事前に新しいアルコールチェッカーを準備しておくことをおすすめします。
おわりに
アルコールチェッカーを用いた検査を義務付けられる事業者の範囲が、従来よりも拡大しました。
飲酒運転による凄惨な事故を防ぐためにも、日頃からアルコールチェッカーの正しい使い方をしっかりと理解し、安全運転を心がけましょう。